- 作者: 鈴木利宗
- 出版社/メーカー: 大修館書店
- 発売日: 2012/11/02
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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あれから33年―。中畑、江川、西本……そして、長嶋茂雄が初めて明かす、あの“伝説"の実像。想像を絶する過酷な特訓は、選手たちのその後に何をもたらしたのか?そして、指導者・長嶋茂雄の知られざる実像とは?そのエッセンスを紹介しよう。
1979年10月28日。東京・読売巨人軍の若手から抜粋された精鋭18人が東京駅に集合した。投手は江川卓、藤城和明、角盈男、西本聖、鹿取義隆、赤嶺賢勇、捕手は、笠間雄二、山倉和博、内野手は河埜和正、山本功児、中畑清、平田薫、篠塚和典。外野手は、淡口憲治、中司得三、二宮至、中井康之、松本匡史。平均年令23.7歳と若い彼ら18人が集結した目的は、当時にプロ野球界では例を見ない秋季キャンプへの出発であった。Bクラス、5位という成績でその年のペナントレースを終了した長嶋茂雄監督は、数日前に、自身がコーチングスタッフとともに厳選した彼ら18人を呼び出していた。
長嶋茂雄 「いつまでもV9の栄光に頼っていては、巨人はこのまま没落するだけ、これは諸君も百も承知。いまの巨人には、ONもなければ、OH(王・張本)もない。もう諸君しかいないんです。明日からの一ヶ月間、地面を這いつくばるような猛練習を重ねて、新しい巨人をつくる以外に道はないんだ。そこで、この秋季キャンプは技術を磨くのではなく、心を鍛えるキャンプだと、肝に銘じてほしい。猛練習のなかから、『俺がレギュラーを取ってやる』という意識を自分自身に見出してほしい。どんな艱難辛苦にも耐えて、生き抜く心身をつくるんだ。その意識革命のために、我々はここ、伊東に馳せ参じたんだ!」
江川卓 「とにかくね、夜、目をつぶった瞬間、朝になる。それが怖くてね……本当に、その恐怖感を毎日味わっていた、そんな一ヶ月間だったんです。キツいなんて言葉は通り越したものがありました。たとえば腹筋はふつう、100回から200回くらいしかやらないんですが、高橋コーチが『300回』と言うんです。」
お風呂はね、ゆっくりつかろうと思っている人は誰もいなかった。体を横たえることのできる空間というか、みんな洗い場でドテ〜ッと寝そべっているんです、大男たちがね。体にへばりついた土と泥を洗い流すだけの入浴なんですよ。だから風呂場は、泥と埃で真っ黒だったという記憶しかないんです。じゃあその後の夕食は天国だったのかというと、そんなもんじゃない。疲れきって体は動かないのに、ご飯が喉を通るわけありませんよね。体はもう、眠りに就きたがってる。だが、眠ってしまえば、即、朝になる。朝になれば、また今日と同じ『地獄の一日』が幕を開けてしまう……。
松本匡史 「もちろん、伊東キャンプがなかったら優勝できなかったと思うんです。参加した全員が全員そう言うと思います。自信になったと思うんですよ。『ほかの連中こんなにやってないでしょ』っていう意識がすごく強かったからそれはものすごく大きかったと思うんですよね。とにかくね、手の皮がボロボロに剥けてしまって、血が出るし、痛みも通り超えると感覚が麻痺します。手袋をしても、その手袋がすぐ破けますし、破れた皮膚とバットが血で癒着してしまうんです。一日中バットを振り続けているので、バットから手が離れなくなっていたんです。ようやく練習が終わるとき、手の感覚なんてとっくにないから、周囲の人に『はがして』と頼んで指を一本ずつ、ひきはがしてもらっていたんです。」
いや〜ウワサには聞いていたけど、こんなに壮絶だったとは思わなかった…。(^_^;) 野球ファン必読!オススメです!