- 作者: 金原亭馬生
- 出版社/メーカー: うなぎ書房
- 発売日: 2010/10
- メディア: 単行本
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志ん生、馬生、志ん朝ー落語界の名門、古今亭の大名跡・馬生を継ぐ当代(十一代)が波瀾万丈の落語家生活四十年を初めて明かす。読み応えたっぷりの本。その中の一部を紹介しよう。
・木挽町は、江戸の頃からの下町でした。ですから、我々の子ども時代は、いまの銀座からは想像できないくらい、下町の匂いが漂っていました。路地で遊んでいて、「いま何時かなあ」すると近くの家から「六時だよ。早く家に帰りなー」とおばさんの声がする。貝独楽(べいご)やメンコ、棒っ切れ振り回してのチャンバラごっこをしていると、「こういう風にやるんだ」と裏技を教えてくれる大人がいたり、喧嘩をしているわけでもないのに、「おい、喧嘩はいけないよ」と声を掛けるおじさんがいました。こういうお節介で口煩(うるさ)い大人が大勢いた。でもこういうお節介な人というのは心の温かい人たちでいまの世の中、お節介な人も少なくなってきて寂しいかぎりです。
・ウチの裏の路地は、木造の二階建て、三階建ての家があって、一階が田中さんで二階が鈴木さんというような例は珍しくなかった。便所や台所は共同で、もちろん風呂はなし。そんな狭い路地裏に子どもが百人ほどもいました。まざに落語に出てくる下町そのもので、
「ちょいと、お光っアん、今晩お醤油がないのよ」
「いいわよ、ウチの持ってって使いなさいよ」
「それから明日のお味噌がないのよ」
「いいわよ、ウチの持ってって使いなさいよ。その代わり、ウチの亭主、今晩いないの」
「じゃア。ウチの使って」
なんて。みんな助け合って生きてたもので……。
落語っていいなあ。特にこの本の中では、前座修行、襲名騒ぎのところがオモシロイ。落語ファン必読ですぞ!(^^♪