「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

BOOK〜史上最強の官能小説!…『ダブル・ファンタジー』(村山由佳)

W/F ダブル・ファンタジー

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私の好きな作家の一人、村山由佳。(^。^) 母の旧姓が「村山」なので、村山姓には親しみがわく。きっと遠い親戚かもね。(^ム^)

さて、この本は、大胆な性の描写で話題を呼んだよね。主人公の奈津と六人の男性との交わり。そこから何が見えるのか。そのエッセンスを紹介しよう。


『才能に恵まれながら夫の抑圧に苦しむ人気脚本家・奈津 35歳。創作への関与に耐えられなくなったある日、デビューから敬愛していた演出家との関係をきっかけに家を飛び出した。演出家の支配的で圧倒的な性愛に溺れたあと、不意に突き放された奈津は、かつての先輩との再会で新たな情事を重ねていく。自らの殻を破るような性遍歴が最後にもたらしたものは――。 』



・「私はほら、正直、あっちの欲求がすごく強くてさ。引きずられちゃうんだよね。何かの発作みたいに、どうしても我慢できなくなるときがあって…」たいていは、周期的にめぐってくるのだった。禁断症状と呼べるほど激しさで、男と寝たくて寝たくてたまらなくなる。それはもう、ずっと昔から。ほとんどセックスを覚えたての頃からだ。性欲の女の何が悪い。男の場合は「絶倫」で、女の場合は「淫乱」。納得がいかない。


・夫へのそういった感情とはまた別のところで。もういちど誰かとめくるめくような恋がしたい、と強く望んでしまう私もあるのです。それも、もちろん性愛をともなう、相手のことを考えただけで吐息まで乱れてしまうような恋が


・結局のところ、と奈津は思った。やは、岩井良介なのだ。彼といるときが、いちばん温かに満たされる。燃えあがるような激しい恋には発展しないだろうが、かわりに日だまりでくつろぐような安らぎは約束されている。互いに自分だけのものにはならないけれど、そのぶん責任を負わずに済むし、自由でいられる。人生における愉しい寄り道ような、秘密の隠れ家のような関係。口で言うのはたやすいが。得るのは奇跡のように難しい、そんな関係。


恋愛ってさ。いくつになっても上手にならないよね。何べん繰り返しても、結局は若い頃と同じようなことに傷ついてさ。同じようなとこでつまずいてさ。かえって引きずるものが増えていくぶん、昔よりどんどん失敗しやすくなってく。何にもいいことなんかありゃしない。


・まったく、どうして男と女というのはこう、互いに同じタイミングで向き合うことができないのだろう。そういえば、昔、ジョン・レノンとヨーコが一緒に出したというアルバムを聴かせてもらったことがある。奇妙なアルバムだった。二人が作った曲が交互に入っているのだが、レノンが息子への愛情をせつせつと歌いあげたかと思えば、そのあとにヨーコが、男に対するあからさまな欲望を喘ぎ声混じりで歌い出すといった具合だ。どれほど愛し合っていても男と女は実は、まったく別のものを見ているだという真実を、あんなにもくっきり浮き彫りにしてみせたアルバムはなかったのではないか。


なんかさ。いいな、こういう自由な関係。束縛したり、されたりすることでつながるんじゃなくて、お互いへの絶対の信頼があった上でゆるやかに結びついていられる関係っていうのかな。


俺と会わない間に、彼と、した?わかるんだよね、そういうのって。中が、変わってる。俺のかたちじゃなくなってる。何度も何度も抱いて、やっと俺のかたちに作り変えたと思ったのにな



「恋愛体質」。自分のしていることは、なるほど世間一般の「恋愛」とは似て非なるものなのかもしれない。恋というよりもただ単に惚れっぽいだけの、それこそ「体質」でしかないのかもしれない。あのときは、そのことに初めて思い至って茫然としたのだ。


ここまで来た以上、もう後戻りはしない。女としてまだ間に合う間に、この先どれだけ、身も心も燃やし尽くせる相手に出会えるだろう。何回、脳みそまで蕩けるセックスができるだろう。そのためなら―そのためだけにでも、誰を裏切ろうが、傷つけようがかまわない。そのかわり、結果はすべて自分で引き受けてみせる。


これを読んで、自分のいままでの恋を思い出した。深いなあ…。やっぱり男にとって女は謎だし、女にとって男は謎なんだろうね。だからこそ惹かれあうのだろうね。単なる官能小説ではない。人は誰でも「恋愛体質」なのかもしれないね。いろいろな気づきがあるよ。オススメです。(^。^)





村山由佳インタビュー「自分の殻を破るために」
http://bunshun.jp/pick-up/double-f/interview/index.html


村山由佳 公式サイト
http://www.yuka-murayama.com/

BOOK&CINEMA〜僕はちゃんと愛せていましたか?『天使の卵』三部作
http://d.hatena.ne.jp/lp6ac4/20070420