「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

BOOK〜『前例がない。だからやる』(樋口廣太郎)

前例がない。だからやる! (講談社プラスアルファ文庫)

前例がない。だからやる! (講談社プラスアルファ文庫)

以前ここにも書いたけど、今年、特に集中して学ぼうと思っている経営者が、元アサヒビール社長の樋口廣太郎氏。この2冊も読みごたえがあったね。


BOOK〜『だいじょうぶ!必ず流れは変わる』(樋口廣太郎)
http://d.hatena.ne.jp/lp6ac4/20110209

BOOK〜『松下幸之助と樋口廣太郎』(皆木和義)

http://d.hatena.ne.jp/lp6ac4/20110204


アサヒスーパードライの生みの親として有名だが、樋口の大きなテーマが、この本のタイトルの通り「前例がない。だからやる」なのだ。迷える時代の現代にも通用する考え方が満載。ちょっと長くなるけど、そのエッセンスを紹介しよう。


・官庁や企業を問わず、前例がないことはやらないのが、まず当たり前です。前例に従って事を進めれば、たとえ失敗しても責任から逃れられるからです。それはサラリーマンの最善の保身術です。私は、企業改革を進めるとき、「前例がないからこそやる」というタブーに挑戦しました。


・当社が積極的に身体障害者を採用しているのは、これまで働いていただいている身障者の方たちが素晴らしい結果を生んでいるからです。身障者の方が一生懸命に仕事をしている姿を見て、一緒に働く人たちが人間として一回り立派になっていくのがわかります。不思議なことに、身障者が配属されている職場が、非常になごやかで、光輝いてくるのが、はっきりとわかります。「自分は神からこの障害を与えられたのだ」と考え、明るく振る舞い、まわりの人にエネルギーを与える気持ちで仕事をしてほしいと思います。周囲の人は、このエネルギーをもらっているのです。当社は、日本でいちばん身障者が働く会社になるよう、これからも積極的に採用を続けていきます。どこの企業でも、積極的に身障者の方に雇用の機会を与えて下さい。きっと職場も社員も明るくなるはずです。


・私は、「メーカーはダイコン役者でなければならない」、といっています。これは目立とうとするタレントではなく地味な役者としてコツコツ努力しなければならないという意味です。メーカーの場合、監督、演出家はお客様であり、お客様と日常接している特約店・酒販店の方々です。役者(メーカー)は、監督や演出家が指示するイメージ通りに演じればいいのです。


・私はアサヒビールが世界一おいしいビールだと思っていますし、私どものノウハウや社員も世界一素晴らしいと思っています。私は「自分で飲んで他者のビールの方がおいしかたら、私のところに報告してきなさい」といっています。社員は自分の会社の商品に惚れ、自信をもって売ってほしいのです。商品に惚れれば、仕事に燃えます。同時に仕事が楽しくなり、仕事が楽しい社員がつくり出す商品こそが、世の中に受け入れていただけるのです。


企業にとって必要な人材は、明るくて元気があって、挑戦意欲に溢れる創造型の社員です。そのためにもっと自分のために時間を使うことです。ふだんから時間をつくって音楽を聞き、映画や演劇を見に行けばいいのです。会社とのかかわり方、考え方を変えれば、いくらでも自分の時間はできます。時間をつくれない人は、意識が変わっていない証拠です。


アサヒビールでは、毎年、新入社員にスーパードライかウーロン茶、ジュースなどの缶飲料をプレゼントしています。入社式で、私はこうあいさつします。「みなさんが今日あるのは、ご両親をはじめ、いろいろな人のおかげです。そういった方々のご恩を忘れてはいけません。そこで、みなさんにビールをプレゼントします。これまでお世話になった方々に、必ず感謝の心を込めた手紙をつけて送っていただきたい。そして、このことをアサヒビールの社員としての最初の行動にしてもらいたい」 要するに、「感謝の気持ちをもちなさい」と簡単に口では言えますが、なかなか実行できるものではありません。感謝するという気持ちを身体で覚えるように、新入社員にビールを渡し、自分の名前で送らせるのです。アサヒビールが感謝を忘れない会社であることを、新入社員にわかってもらえれば、それでいいのです。


・入社式に、私は、「今日から、あなたたちはアサヒビールの財産をわれわれと共有します。いずれ、あなたたちが相続するのですから、ぜひ、立派な会社にしてください」という意味のお願いをしています。「頑張れ」といわない理由は、もう一つあります。それは、入社式で厳しい経営環境を説明する必要がないからです。つまらない危機感をあおっても、会場の雰囲気がさらに湿っぽくなるだけで、張り切って会社に入ってきた若者の気持ちを萎えさせてしまいます。「これからの時代は大変だ、大変だ」というのはやめることです。



人間国宝の陶芸家・近藤悠三さんの言葉で、「職商人(しょくあきんど)」があります。本当に、いい言葉です。それは、「よい品物をつくり、よい仕事をし、毎日一生懸命に働いているのに、認めてくれないのは、世の中が悪い」というのは間違いで、モノをつくる人は、職人プラス商人でなければならないという意味の言葉です。職人というのはいい品物をつくる人です。商人というのは、いいことを口先だけでいうのではなく、品物の本当の価値を見出し、いろいろな工夫を凝らして、その品物を理解していただくように努力する人のことです。職商人は、質のいい商品、独走的な商品をつくる技術をもった職人の精神と、商品をお客さまに納得して買っていただく商人の精神をあわせもった人という意味です。仕事をするうえで私が求めるのは、この職商人の資質です。



・時代がどう変わろうと、ミドルは「自己燃焼」できる人でなければ、務まりません、私流に表現すれば、「心の中にダイナモ(発電機)を持っている人」です。自ら心のダイナモを回し続け、強い熱情をもっていれば、そのエネルギーが他人に伝わり、信頼関係につながります。その強い熱情は、強い運勢を自分の中に招き入れる力ももっているのです。


リーダーシップとは、管理能力ではなく、部下の能力を充分に引き出すこと。そのためには、自分自身が豊かな発想を持って、いろいろな才能をもった部下と一緒に仕事ができるかどうかが大切なことです。そこで必要なのは、他人に対する思いやり、つまり自分の意見と異なる意見をもつ人を認める度量です。これが、よりよい人間関係を構築するためには大事なことです。


・人間には、「かしこ、かしこ」「かしこ、あほう」「あほう、あほう」「あほう、かしこ」の四つのタイプがあります。男が妻に迎える理想の女性像は、「あほう、かしこ」だといわれます。このことは、会社組織のリーダーについても、同じことがいえます。「かしこ、かしこ」は、頭のよさをひけらかすので、周囲を暗くさせてしまう。「あほう、あほう」ではまったく頼りになりません。「かしこ、あほう」もいざというときに危なくて仕方がないでしょう。部下がリラックスして仕事ができ、肝心なときには、頼りになる「あほう、かしこ」の上司なら、組織も仕事もスムーズに運びます。


・同じような意味で「知にして愚をようくすれば、すなわち天下の知、加わるものなし」という言葉があります。これは、自分に知恵があっても愚か者を自覚して、他人の意見を受けいれようになるなら、もはや怖いものはないとう意味です。「知」はリーダーにとって欠くことができないものですが、「知」がすぎると問題の細かいところまで見えすぎて、ああでもない、こうでもないと迷いも多くなるものです。つまり「愚」の部分もなければ、大胆な判断や的確な指示が出せません。ビジネスマンが、心したらいい言葉だと思います。


・私はグループ経営を考えるとき、見た目がきれいな「富士山型経営」よりも、いくつもの峰が重なってる八ヶ岳型経営」がいちばんいいと思っています。八ヶ岳は、高さは富士山の低いのですが、いくつかの峰をもって威風堂々とした形状をしています。企業経営にたとえれば、富士山のように一つの大きな親会社がグループに君臨するより、いくつものグループ会社が裾野でつながりながら、一つの企業群を形成するというイメージです。


・企業の経営者として、もっとも大切なことは、自分の痕跡を残さないようにすることではないでしょうか。会社というのは天下の公器であって、預かりものだという意識が、いつも抜けません。私が辞めるときは、アサヒビールにとって樋口の存在感がまったくなくなっていないと、会社の発展はありません。「樋口は、いまは何をやっているのかな」といわれながら会長職を終わることこそ、アサヒビールにとって、もっとも幸福なことなのです。


・これからの時代に求められる経営スタイルとして、運転手型から船長型という言い方もできます。高度成長期は、進むべき方向がはっきりしているので、トップはアクセルとブレーキをきちんと操作できる、いわば運転手型でよかったのです。しかし、今日の経営は、まさに海図なき航海のようなものです。どこに岩礁があるのか、天候がどう変化するのかなど、未知の要素が散在する海を航海していかなければなりません。経営者は船長のように、未知の海でスクリューと舵を巧みに操作するために航海士、機関士、通信士などの人たちが、うまく動き回れるように指示を出さなければなりません。このとき、経営者に求められる素質は、変化の中にあって先行きの見通しをもつ、先見性と、変化に対する柔軟に対応する戦略性です。企業は生命体です。すぐやめる必要があるもの、少しずつ修正していかなければならないもの、新しく生み出さなければならないもの―この三つを常に峻別し、全体の調和を考えることで、企業としての活力が生まれてくるのです。


・私は「何とかお願いします」という言葉の使用を社内で禁じています。商談のときは、きちんと「こういう条件ですから、是非ご利用いただけませんか」と、論理的な言い方が出来ないとダメなのです。


いいなあ!「あほう、かしこ」を目指そう!(^o^)/