ひとつのことを追求して探求するってスゴイよね。この本はまさにそれ。「アリ」の研究者によるアリの世界にはビックリすることばかりだっ!!!(^^)
「熱帯の森を這いずり回り60回以上ヒアリに刺されまくった「アリ先生」による驚愕のアリの世界。究極の役割分担社会に進化した、アリはすごい!アリのおなかにマーキングして、超地味な50時間個体観察。アリの研究はラクじゃないけど、やっぱり楽しい」そのエッセンスを紹介しよう。
・キュキュキュキュ キュキュキュキュキュキュ
2012年9月9日、夜10時過ぎ、
パナマ共和国ガンボア市にある
スミソニアン熱帯研究所の宿舎の一室で、僕は言葉を失っていた。耳元にさんざめくアリたちの声、声、声。
「ハキリアリ」の働きアリを入れた飼育ケース。日本から持ってきていたオリジナルの高性能小型録音装置は、確かにアリたちの声をとらえていた。何を言っているのか当然、わからない。けれど、
まちがいなく何か会話をしている。
SF映画で、奇妙な音声を発する
宇宙人たちと遭遇したような。かかわってはいけない、まずい世界を覗き見てしまった……そんな衝撃に襲われていた。
・ハキリアリは
中南米を中心とした地域に生息するアリで、
「農業をするアリ」として昆虫好きにはよく知られた存在だ。
まさか、アリがしゃべる、とは!?しかも、超おしゃべり!
やっぱりアリはおもしろい。
・アリは人間よりもはるかに長い歴史をもっている。人間はホモ属ヒト科ヒト亜科。分岐した年代は1300万年ほど前。ひとつ上のサル目の分岐年代は6500万年ほど前。さらに上の階層は哺乳綱で、こちらは約2億2500万年前に分岐したものと考えられる。一方、アリ類はハチ目アリ亜科に属していて、約1億5000万年前にハチとの共通祖先から分岐。その上のハチ目は2億年前、さらに上の階層の昆虫綱は約4億5000万年前に分岐したと考えられている。
・現在、地球上には1万1000種、1京個体のアリがいるとされている。5000万年前、この地球で生き延びてきた。
ホモ・サピエンスが登場したのは、たった約20万年前。
昆虫は僕らの大先輩であり、なかでも、アリは進化・適応の詰まった宝箱である。
・「なぜ、アリだったのですか?」→「好き」で「おもしろいから」というのが素直な答えになる。アリがいいのは水槽に入れて、うまくいけばずっと飼育できるところ。ゴールがずっと先にあるのだ。
・アリは「真社会性生物」に分類される。定義は①集団が子どもを協力して育て、子どもを産まない個体が存在すること。②繁殖だけを行う女王アリが存在すること。そして③世代が重なること。人間は「亜社会性生物」。血のつながりのある家族がひとつの単位となって生活し、世代の重なりはない。アリの社会は人間より複雑で、かつ、極めて合理的に社会システムがデザインされている。
・
働きアリはすべてメスだということをご存知だろうか?
アリの社会はメス社会。オスアリが生まれてくるのは1年のうち繁殖期だけ。「
精子の運び屋」だけがオスアリに割り当てられた仕事で、
交尾のための「結婚飛行」に飛び立ったらお役御免。
・働きアリが割り当てられる仕事は年齢によって決められている。エサ探しや偵察など、巣から出る危険な仕事は老齢なアリが担当する。若いアリではなく、まもなく天寿をまっとうする、という個体が危険な仕事をしたほうが、コロニー全体のダメージを抑えられる。極めて合理的な戦略なのだ。
・こうした1個体1個体が集まり、まるでひとつの生き物としてふるまう集団を生物学では「超個体」という。思うままに動いていながら、結果として集団が最適に維持されるという、僕らが理想とするべき社会をすでに完成させているといえる。
・ヨコヅナアリの働きアリは、なんと体の7割が頭。
ナベブタアリは、頭にマンホールのような、お盆のような丸いものをつけている。
頭で巣穴の入口を閉じて、敵の侵入を防いでいる。エサはほかのアリから口移しでもなる。一生、扉である。
「一生、貯蔵庫」という「ミツツボアリ」は、巣の中で天井にぶらさがって仲間が集めてきた蜜をおなかに溜め込む。そして、食糧や水分が不足する乾季に口移しに仲間に分け与えるのだ。
「敵を道連れに自爆する「バクダンアリ」」「においに頼るアリのコミュニケーション」「アリは何をしゃべっているのか」「働きアリはなぜ、メスばかり?」など。
スゴイなあ……未来の人間の社会を象徴しているのかもしれない。思わず人に話したくなる雑学ネタが満載。超オススメです。(^^)