難病モノや親子愛のストーリーには弱い……年とともに涙もろくなってしまって困る……。(T_T) この小説もラストは涙が止まらなかった……。
「「父親」という生きものは、どうしてこれほど哀しいのだろう?白血病の息子の治療費を用意するために八方手を尽くし、最後は自分の角膜まで売ったチョン。親であり、子であるすべての人に贈る愛の物語。韓国のベストセラー小説の邦訳」そのエッセンスを紹介しよう。
・白血病は、アニメに出てくる意地悪な猫、トムみたいだ。僕は二十日鼠のジェリー。どんなに逃げてもトムはジェリーを追ってくる。決して逃してくれない。入院と退院、入院と退院ー。二年間、この二つの繰り返しだった。今度の入院はもう一か月になる。
・タウムが生きるよすがだった。タウムが太陽なら、自分はその周りを回る惑星だった。万一息子を失えば、自分は遠心力によって、この世の外に跳ね飛ばされてしまう。生きる理由を失ったまま、笑い、騒ぎ、歌うわけにはいかない。ところが、タウムは聞く。「あとどれだけ苦しめば死ねるの。こんなに苦しんだからもう死んでもいいじゃない」と。
・「あなたが虚しく過ごしたきょうという日は
きのう死んでいったものが
あれほど生きたいと願ったあした」
・精算の期日はとうに過ぎ、会計課に呼び出された。彼の頭は、当面の入院費ではなく、その十倍を超る金額のことでいっぱいだった。三千万から四千万ウォン。完治の唯一のチャンスである骨髄移植。移植しなければ、タウムはやがて死ぬことになる。しかし当面の入院費さえおぼつかなった。果てしのない砂漠に迷い込んだようなものだ。どちらかを選ばなければならいのに、どちらも選べない。恥ずべき、無能な父親だ。
・「『タウム』って名前には、素晴らしい意味があるんだ。人間らしく(サラムタウム)、美しく(アールムタウム)、睦まじく(チヨンタウム)…」この3つに共通している『らしく(タウム)』という言葉からとったのがお前の名前なんだよ」僕の名前には、パパの願いが込められている。パパの息子が人間らしく、美しく、睦まじく生きてほしいという願いなんだ。
・僕がとても大事にしている『子ども化学百科』という本、全十二巻のなかの第八巻「淡水魚編」にカシコギという小さな魚がでてくる。
カシコギは不思議な魚だ。ママカシコギは産卵後、どこかに逃げてしまう。卵たちがどうなろうとかまわないんだね。パパカシコギが残って卵の世話をする。卵に襲いかかるほかの魚たちと、命をかけて戦うんだ。寝食を忘れて熱心に卵を守る。卵は孵化して雑魚たちがぐんぐん大きくなると、子どものカシコギたちはパパカシコギを捨てて、それぞれ自分の道に行ってしまう。子どもたちがみんな去ったあと、一人残されたパパカシコギは岩の間に頭を突っ込んで死んでしまう。カシコギは、僕のパパ。
・ミン医師「医者生活20年のあいだにいろいろな経験をしてきましたが、タウムが退院した日ほど胸を痛めたことはありませんでした。あなたは特別な保護者でした。母親の献身はよく見知っています。しかし、あなたのように献身的に子どもを看病する父親は初めてです。わたしが同じ立場になっても、あなたのようにはできないと思います」
・「とてもきれいな夕焼けですね。夕焼けがきれいなのは、東から西まで長い距離を通ってきたからなんですって。でも、あまりに美しい夕焼けは雨の前兆なんですね」前兆?その単純な言葉が、なぜこうも身にしみる痛さで胸を刺すのだろう?
・「息子が病気になってから一番耐えがたかったことは、子どもの爪を切ることだったよ。爪を切ってやるたびに確認させられるんだ。爪が伸びただけ残された日数が減っていくんだ。爪はどんどん伸びるのに、子どもの命はどんどん少なくなっていく。俺は息子の爪をできるだけ短く切った。それがタウムの命を延ばすような気がしたんだ。でも今はその爪を長く残して切るんだ。もうこれ以上、爪に執着する必要がないからだ。俺にとってそれがどれだけ幸せか、誰もわからないと思う。言いたいことはー、俺はとても幸せな父親だってことだよ」
・二日前、角膜を売った。農作物の白菜を市場に持ち出して売るように。四十代初めの男性はその角膜で光を取り戻し、チョンはそのお金で子どもの治療費をつくった。しかし彼とその男性は、互いの幸運を折り合うことはない。それは明らかな取引であり、しかも法が禁ずる密売なのだ。
・世の中を愛し、世の中から愛されるタウムになることを望む。ーパパより。
チョンは出版された詩集の扉にそう書いた。それが彼の望みのすべてだった。父親の名前で記す最後の祈りでもあった。将来、息子が一、二編の詩を胸に抱くころには、その言葉の意味が理解できるだろう。そして、自分をフランスに送るほかなかった父親の気持ちをわかってくれるだろう。
・息子よ。ああ、俺のすべてだった息子よ。
パパはこの世にいなくなっても、それはまったき死ではないのだ。この世にお前を残すかぎり、パパはお前の中に生きている。お前はもうパパを見ることも、声を聞くことも、触ることもできないだろう。だが、パパはいつまでもお前とともに前へ前へと歩いていく。お前が疲れないよう、倒れないよう、お前が行く道を間違わないよう気をつけながら、お前についていく。永遠に、永遠にー。
母の愛は当然だけど、父の愛はこの物語でよく分かる。ワタシも自分ごとのように父を思い出しました。感涙必須っ!超オススメです。(・∀・)♪